飯尾の駄文日記

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星野監督への期待

岩村選手のイーグルス入団も決まったようで新生星野イーグルスの陣容が見えつつあります.
その中で星野監督が投手陣の形をどうするか.特にリリーフと先発の配置分配をどうするかについて非常に興味を持って見ています.

1999年,中日ドラゴンズを率いる星野監督は,強力な4人のリリーフ陣を擁し監督としての2回目の優勝を成し遂げました.以下にこのリリーフ陣を並べてみます.

岩瀬仁紀:65試合登板 10勝2敗1S  投球回数74.1 防御率1.57
落合英二:56試合登板 5勝4敗2S  投球回数51.2 防御率2.79
・李 尚勲:36試合登板 6勝5敗3S  投球回数95.1 防御率2.83 ※登録名はサムソン・リー
・宣 銅烈:39試合登板 1勝2敗38S 投球回数31.0 防御率2.61

この年限りで宣投手は引退,サムソン投手が退団し翌年からは新入団のギャラード投手がクローザーを務めることとなります.

その後の星野監督のドラゴンズ在籍時であるの2001年までの成績を比べると
・岩瀬
2000年 58試合登板 10勝5敗1S 投球回数80.1 防御率1.57
2001年 61試合登板  8勝3敗0S 投球回数62.2 防御率1.90
・落合
2000年 21試合登板  0勝2敗0S 投球回数19.2 防御率2.75
2001年 45試合登板  0勝3敗2S 投球回数41.2 防御率1.73
ギャラード
2000年 51試合登板 1勝2敗35S 投球回数47.0 防御率2.68
2001年 47試合登板 0勝1敗29S 投球回数46.2 防御率2.12

成績の面からみる限りでは圧倒的な安定感を誇る岩瀬投手を最後まで抑え投手に指名することはありませんでした.星野監督は左右をかなり気にするので,岩瀬投手が左腕であったことも多分に影響しているとは思います.そもそも宣・ギャラード両投手ともに抑え投手を外されるほど悪い成績ではなかったですし,外国人選手であることから契約上の縛りが存在した可能性もあります.
しかし,当時は抑え投手の黎明期といってよく,ベイスターズの佐々木投手やスワローズの高津投手などが大活躍し,その実績が評価されてクローザーの地位が確立した時期にあたります.対して中継ぎ投手の評価はまだ上がる前であり,曖昧ながらなんらかのメディアで岩瀬投手を抑えにした方が良いという意見自体は耳にした記憶があります.
ちなみに前述の落合英二投手が中継ぎの地位向上を求めるという理由でシーズンオフの契約更改で頻繁に保留するのもこの時期です.


以前の記事でも触れましたが,抑え投手に最も良い投手を持ってくることは,主に2つの点,相手の打線に応じた変更が利かないことと試合展開によって宝の持ち腐れになる可能性があること,から最適ではないというのが持論です.実際に,岩瀬投手は7回あるいは8回に主軸の左打者相手にあてるように使われることが多々ありました.
(というには因果関係が逆で,この例を見ていたからこそ,この考えを持つことになったと言えるかもしれませんが)


これらの点から,星野監督は,確固たる考えのものなのか経験則なのかは定かではありませんが,抑え投手よりも中継ぎ投手に優秀な投手を起用しようとしていた意図が読み取れます.

しかし, 同じ記事で触れていますが,リリーフ陣を充実させることはセ・リーグでは非常に効果的ですが,パ・リーグではDH制があることから先発投手に比重を置いた方が有利である,と自分は考えています.


今季パ・リーグを制覇したホークスが強力なリリーフ陣,SBMを揃えていたことから,パでもリリーフが揃えた方がよいという意見もあるでしょうが,同レベルのスリーマウンテンズを擁するイーグルスが最下位に沈んでいます.もちろんスリーマウンテンの形成自体がシーズン半ばからでしたし,ホークスには更に甲藤・森福投手らがいたことも大きく影響しているでしょう.それ以前に,この一例から結論付けるのは短絡的ですが,少なくとも理屈の上ではセに比べればリリーフ陣の重要性が低いと考えられます.

ホークスのSBM
・摂津 正:71試合登板 4勝3敗38H1S  投球回数82.1 防御率2.30
・ファルケンボーグ:60試合登板 3勝2敗39H1S  投球回数62 防御率1.02
馬原孝浩:53試合登板 5勝2敗2H32S  投球回数60.2 防御率1.63

イーグルスのスリーマウンテンズ
・青山 浩二:41試合登板 5勝1敗15H1S  投球回数52.1 防御率1.72
・片山 博視:53試合登板 1勝2敗10S0S  投球回数62.1 防御率1.88
小山伸一郎:55試合登板 5勝4敗15H16S  投球回数59.2 防御率2.41

前ブラウン監督がシーズン後半に先発投手を中4日で回した時期があり,その時は日程的な理由で合理的ではないと考えましたが,今にして思えば,リリーフ陣に比重が大きく先発投手が揃っていないというチーム事情から,リリーフを投入しやすいチーム状況にしてリリーフ勝負に持ち込むという腹積もりだったのかなと思います.
つまりセ・リーグ的な野球をパ・リーグで行おうとしたと.
これはこれで現実を踏まえた上での,対症療法的なものとしてはある程度合理的な判断だったのかなと思います.
ただし,セ・リーグでは終盤互いにリリーフ勝負になるからこそ,その優劣が勝負に響いてくるわけで,当然,イーグルスがそうしたところで相手チームがそれに応じてくれるわけもなく.

あえて,ブラウン監督の失敗として挙げるのであれば,リリーフ陣に優秀な投手が偏った編成を,パ・リーグでしてしまったということなのかなと思います.
もちろん,選手個々人の先発適性や資質の問題も大きいですし,何より一番の問題点は打線の得点力(長打力)不足,これに尽きますが.



翻って来季のイーグルス,少し前ですが,青山・片山両投手の先発転向という記事がありました.佐藤コーチの考えという可能性もありえますが,記事をみる限りでは星野さんの考えが強く反映されている可能性が高そうです.

投手の適性をみている可能性もありますが,これまでの星野監督の監督経験からするとこの判断は少し奇異に映ります.
前述の落合・サムソン各投手は実は当初先発で起用されていました.
岩瀬投手本人も先発を志望していたことがあります.
宣投手も韓国時代は先発・リリーフを両方努めていました.※ただし日本に来る数年前からは抑え主体にはなっています.それでも1994年は全27登板中8試合で先発を務めています.

このように少なくとも自分の知る限り,星野監督がリリーフを切り崩してまで先発に投手を固めるということをしたことはありません.



最初に書いたように,星野監督は抑え投手の評価が過剰に高かった時期に,相対的に評価が低かった中継ぎ投手の重要性について認識していた節があります.
この感覚,そして今回の先発転向指令からみると,セ・パの野球の違いをかなり深く認識しているのではないかと思います.それこそ,こんな適当に書いているブログなんかよりもずっとずっと深いレベルで.
そういった意味で,星野監督が今季のオフから来季にやる選手の獲得や起用,そしてそれらのこれまでの監督時代との比較から,新たな知見が得られるのではないか.

そんなことを期待しています.