STAP細胞について雑記の追記9 早稲田大=ディプロマミル?
忙しいので簡単に.もしかしたらその内また細かく書くかもしれません.
コピペ文化とヒヤリハット
STAP細胞問題というよりも早稲田大学ディプロマミル問題という様相を呈してきました.
数日前に書いた記事:
STAP細胞について雑記の追記4 ある意味かわいそうな小保方さん - 飯尾の駄文日記
そこかしこにおかしな点があるのですが,根本は免許=博士号を出した似非教習所ですね.
早稲田がちゃんとした審査さえしてれば今回の件は無かったわけで.
Introductionで文献引用が無いとか,不自然な点は多くあるのに通したということは,まともに審査してないとしか判断できません.
実質的に,早稲田大はディプロマミルをやっていますと宣言しているに等しいわけで.
と書きましたが,本当にそのような感じになってきました.
加えて,
何より真っ当に早稲田の博士号を取得したOBらこそ怒っているでしょうね.
と書きましたが,どうやら怒るに怒れない理由があったようです*1.
少なくとも出身研究室内でこういった風潮が蔓延していたのであれば,「コピペが悪いことだと認識していなかった」との発言はその場凌ぎのいいわけでもなく,本心だったのかもしれませんね.
まぁヒヤリハットみたいなものです.
これまでのコピペ博士の中にも,一応研究者としての能力者を有している人もいたでしょう.
ただコピペ文化が蔓延していた研究室で研究者が育ち,遂にはそうではない人に博士を与えることになってしまい,今回の件へと繋がったのでしょう*2.
何を持って裁くべきか
主犯?監督不行き届き?
ただ昨日書いた通り,早稲田大学や主査が果たして主犯なのかそれとも監督不行き届きなのか,は区別して議論した方が良いと思っています*3.
わざわざこの話をするのは,件の研究室以外にも飛び火した際のことを想定しています.
この先まず早稲田大学のほかの研究室にも追及の手が伸びることはまず間違いないでしょうし,やがては他の大学にも広がっていくことでしょう*4.
そしてその際に他大学でコピペが全く発覚しないとは考えにくいです.
コピペが発覚した場合,その博士論文を書いた人物の問題であるのは勿論なのですが,その指導教官や大学はどこまで責を負うべきか,というところは事前に示しておいた方が良いかな,と.
コピペを見破るのは困難
杜撰なコピペであればすぐに見破れますが,下記のような場合,簡単には見破れないものがあります.
電子化されていない論文からだとソフトは使えない
分野によっては電子化されていない論文も多くあり,そういった論文からのコピペの場合,ソフトなどを使用しても探せません.
まぁ,この場合はコピペと言うよりは書写ということになりますが.
真っ当な博士論文でも文体が変わることはある
コピペがあると文章の癖が異なるのですぐにわかるという指摘もあります.
ただ,人によってそれぞれですが,博士論文は長い時間をかけて書く人もいます.
その場合,時間経過により章によって文章の癖が微妙に異なってしまうことはあります.
加えて,博士論文の成果の少なくとも一部は既に投稿・受理されているはずです.
投稿の際に,英文校正や査読者の英文チェックが入った結果,その部分だけ他の部分と筆致が異なってしまうこともあります*5.
教員はありとあらゆる論文,サイトを見ているわけではない
これは説明するまでも無いと思いますが,教員であればコピペに必ず気づくわけではありません.
小保方さんの博士論文のBackgroundがアメリカ国立衛生研究所のコピペだとされましたが,専門家であっても,この文章だけ単独で見せられてコピペだと気づく人はそういないのではないでしょうか*6.
きちんと論文の体をなしているか
自分としては,論文の体をなしているかが重要だと思っています.
特に引用はきちんとなされているかですね.
以前にも書きましたが,小保方さんの博士論文のBackgroundの問題で一番大きなところは,一切引用が無かったことです.
少なくとも,自分がこれまでに見た論文の中で,序章で引用がない物は見たことがありませんし,博士論文のような形の論文で引用がないことは考えられません*7.
前にも書いた通り,これに気付かないということは斜め読みすらしていないとしか考えられません.
逆に言えば,もし小保方さんがアメリカ国立衛生研究所からコピペしたものに引用符を入れ,細かい用語を直していたのであれば,*8大学側や専門外の他の教員もそう簡単には見破れないと思います.
とりあえず,今考える基準です.
*1:半分冗談ですが半分本気です.少なくとも自分の母校でこういうことがあれば,自分なら早く声明を出すように大学や同窓会に要望します.時間をかければかけるほど,他のOBも一緒だろうとみなされるようになりますから
*2:とは言え,今回の直接的な被害は比較的少なかったと思います.もしもう少し“巧い”人が今回の件を起こしていたら,追試が成功せずに廃れるまで少なくとも半年以上の間,世界中の研究者の時間と彼らの研究費が浪費されていた可能性もあります.その部分を真っ当な研究に回していれば,それで助かる人も増えるわけです
*3:いずれにせよ能力不足であることは間違いありませんが
*4:身に覚えがある人は戦々恐々としているでしょうし,そうでない人はむしろ嬉々としているでしょうね.何せD論は折角書いてもみてくれる人が少ないので残念がっている博士持ちは多いです
*5:もちろん,上記の点も含めて院生自身がチェックして修正するべきなのですが
*6:専門家なのに,というよりは専門家だからと言う方が正確でしょう.プロであればある程,論文から情報を取る癖がついています
*7:普通の論文では,Discussionについで引用が多い個所です
*8:指導教員はともかく