続・“選手の見極め”のパラドックス【廣瀬は干されたのか?】

ASブレイク中にこの記事を書きたかったのですが，急に忙しくなってしまって書けませんでした．そのためデータ諸々は少し古いものになりますがご容赦を．えっ，昨日の試合? 昨日のカープ戦は雨天中止だったと思いますけど…．さて，およそ2年前に当時の赤松選手と天谷選手の起用を想定しつつ，特に野手の選手起用やその見極めについて記事を書きました． “選手の見極め”のパラドックス評価を改めるか解釈を変えるか仮定の話になりますが，試合前の練習で野手の見極めが完璧にできて，シーズン通せば2割しか打てない選手でも4割打てるような投手にだけぶつけることができる監督・コーチがいたとしたら? 結果的には打率4割にもかかわらずレギュラーになれない選手ばかりになります．要するに選手の見極めがうまければ上手いほど，傍からみると良い選手をベンチに置いているように見えるということです．すなわち選手起用の才能があるほどにそれが評価されないということですから，これはなかなかに厄介なパラドックスですね．今季のカープにおいても廣瀬選手の起用方が批判されることが多く，場合によっては「廣瀬選手が干されている」といった意見が出ることもあります．ですが，個人的には上記のパラドックスの問題を孕んでいる可能性を考えています．今季の廣瀬選手．開幕直後はベンチを温める機会も多かったですが，4月21日に三番に入り1安打2死四球を記録すると，次の試合から四番に座り15打席連続出塁という日本記録を樹立．その後6月5日までは，5月22日の1試合を除いて全試合で四番か三番で起用されます． 7月9日以降は四番起用は無くなり，再びベンチを温める機会も多くなりました． 7月10日に再び四番に座ってからはスタメンに座る機会も増え，そのままASを迎えます．前半戦を終えての成績は，打率.291の5本塁打28打点．ファン投票によるAS選出も含め，前半戦の成績は良好なものであったと言えるでしょう．まずは起用方に基づいて下記の4つのタームに区分し，それぞれの期間のみの成績を抽出します．打率とOPSを併記します． 1 (3/30～4/20)：.400　1.305 2 (4/21～6/5)：.311　.848 3 (6/12～7/9)：.142　.450 4 (7/10～7/17)：.285　.775 一目瞭然で3の期間 (6/12～7/9) の成績が悪く，少なくとも打撃成績からみれば起用しなかったことは妥当であったと言えると思います．廣瀬選手はスタメンで使わないと調子が出ない選手という可能性も考えられますが，この期間中の廣瀬選手のスタメン4試合 (6/12，6/16，6/23，7/6) のみの成績は，16打数3安打の打率.188でOPSは.610です．母数が小さすぎるという点はありますが，単純に状態が悪かったと見るのが自然ではないでしょうか． (“状態が悪い”というのは対策がなされるなどの要因を含む広い意味での“結果を残しにくい状態”ということです．) この期間中はカープの試合は23試合ですが，仮にこの全試合に出場し4打席ずつ立ち，この期間中に.142の打率を残したと仮定しましょう．その場合，打率は.250まで下がる計算になります．この計算には四死球を勘定に入れていませんので実際に4打席ずつたったとしてももう少しだけ打率は高かったと思います．とは言え3の期間中には四死球は2つしか選んでおらず，出塁率も.200ですから，「四死球を選べるので調子が悪くても起用した方が良い」という主張が説得力を持つほどではないと考えられます．言い方を変えれば，「首脳陣の選手の見極めができていたから，今季の廣瀬選手が三割に近い打撃成績を残している可能性もある」ということです．もちろん守備の面での貢献も大きいので，その点を考慮する必要はありますし，堂林選手の起用についても問題があると思っています． (そもそもコスト的な意味で三塁を守れそうな選手が居ないという編成的な問題も大きいですが，堂林選手自身に過度な批判の矛先が向いてしまっている現状は本人にとっても良いとは思えません) また，チーム全体で考えれば，他の選手の成績と比べることも必要だとは思います．ただ少なくとも「廣瀬選手を起用しない野村監督 (あるいは首脳陣) は選手の見極めができない」と結論付けられるかと言えば多分に疑問の残るところです．結びの言葉は以前の記事と同じですが，改めて野手の起用の適切な評価は難しいなと思います．