続 “酷使”について考える (1:長期的観点から)【計算できる戦力をつくる】
以前の予告通り,酷使とは何かということについて書きたいと思います.
※ほとんど当たり前の話に終始しますが,自己確認という面もありますのでご容赦ください.
既に過去記事でも触れていますが,改めてということになります.
そのため重複する箇所も多数あるかと思いますがご理解ください.
“酷使”について考える
“酷使”について考える (1) ~選手生命に与える大きなリスク~
“酷使”について考える (2) ~“怪我”の手前にあるもの~
“酷使”について考える (3) ~“勝つために”酷使を避ける~
動機としては,今季後半に今村投手の登板が過多になった時期に,かぷ吉さんのところでその是非について議論が起きていたことにあります.
そもそもの問題として,酷使を考えるには3つの視点,長期的・中期的・短期的観点を持つ必要があると考えています.
このいずれの面からみても問題のある起用であると判断される時もあれば,そうではない時もあります.
前者の場合は大きな問題はないのですが,えてして後者のケースになることも少なくなく,
その場合は一概に是非を判断しづらくなります.
カープをモデルケースとして, それぞれ考えて行きたいと思います.
多分全部で3回の予定です.
まずは長期的観点から.
計算できる戦力をつくるということに焦点を当てたいと思います.
当然のことながら,安定した戦力を備えるということは,
計算できる戦力を揃えるということとほぼ同義です.
以下は2006年から2012年までの,カープにおける各季の,
15試合以上先発登板あるいは30試合以上救援登板した投手を纏めたものです.
※ヌルデータ置き場さんのデータを参照.
※20先発以上と50救援以上の投手は下線で示す.
※連続の場合は赤字で示す.括弧内は継続年.
※敬称略
2006年
・先発:大竹(2)・佐々岡・黒田 (8)・ダグラス・ロマノ
・救援:永川(2)・林・高橋・横山・広池(2)・佐竹(3)
2007年
・先発黒田(9)・大竹(3)・青木高・高橋・長谷川
・救援:永川(3)・横山(2)・林(2)・梅津・青木勇・広池(3)・上野
2008年
・先発:大竹(4)・ルイス・高橋(2)・前田・篠田
・救援:梅津(2)・永川(4)・シュルツ・上野(2)・横山(3)・岸本
2009年
・先発:大竹(5)・前田(2)・ルイス(2)・斎藤
・救援:シュルツ(2)・横山(3)・永川(5)・林
2010年
・先発:前田(3)・スタルツ・ジオ・斎藤(2)
・救援:大島・岸本・横山(3)・梅津・ベイル
2011年
・先発:前田(4)・バリントン・福井・ジオ・篠田
・救援:青木高・サファテ・今村・岸本(2)・豊田・上野
2012年
・先発:バリントン(2)・前田(5)・野村・大竹
・救援:今村(2)・ミコライオ・サファテ(2)
2007年~2009年頃には,途中で黒田投手がFAしているなどにもかかわらずある程度顔ぶれが固定できているのに対し,10年以降は継続的に登板できているのは前田投手だけなのですよね.
このような状態では計算できる戦力を揃えるとは言い難く,それは即ち,
先に書いた通り,安定した戦力を備えているとは言えないということだと思います.
これまでの投手の例を挙げていますが,当然野手も同じことです.
今年カープでは,特にシーズン後半に堂林選手の成績が強く批判されました.
ある意味では批判されるほど成長したとも言えますが,個人的には“戦犯”のようにみなされていることに対しては違和感を持っています.
もし本当に今季の“戦犯”を探すとしたら (この言葉は嫌いなのですが),栗原選手と東出選手でしょう.
投手も含めて新戦力が台頭してきたとしても,もともと一定の戦力として期待していた選手が離脱してしまうと,結局のところ穴埋め程度にしかなりません.
仮に今季栗原選手と東出選手が怪我をせずに例年通りの成績を残していれば,堂林選手やあるいは菊池選手などの若手の活躍はそのまま“上積み”になったはずですが,打撃的には“穴埋め”にしかならず,守備で貢献できない分が“マイナス”と捉えられてしまったという印象です.
カープに限らず,数年にわたり安定した成績を残すと,年棒が上昇することが普通です.
これは皆勤賞のような長期の活躍に対する功労としての部分も当然大きいとは思いますが,
と同時に,編成の段階で計算が立つが故という面も相当に大きいと理解しています.
例年のオフシーズンには,「○○選手が覚醒すれば~」というフレーズはよく耳にします.
ただその前に,「今季台頭してきた××選手や△△選手が継続して活躍する」をはじめとする既存戦力の安定した成績がない限りは,純粋な上積みは極めて僅かです.
最初の話に戻りますが,投手で新戦力が出てきたとしてもそれが継続できなければ,毎年振り出しに戻ってしまい,戦う上では上積みがないと言っても差し支えがないでしょう.
そのシーズンの戦いはもちろんですが,シーズンを超えたレベルでの選手起用を考えて行く必要があると思います.
(もちろん,これは必ずしも首脳陣だけの責任ではなく,フロントが負うところも相当に大きい筈です)
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