飯尾の駄文日記

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選手補強の手段 (下)【イーグルスの補強戦略】

今回はイーグルスの補強について.

上はこちら→選手補強の手段 (上)【カープでのFA補強の価値】

以前書いた記事について修正をさせて頂きます.
ブラウン監督解雇とイーグルスフロントの目指すもの(2010.9/30)で,
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イーグルスのフロントの目指すものがわからなくなったからです.
これまでイーグルスというチームは大金を使った激しい補強というものをほとんど行ってきませんでした.チーム総年棒も12球団中カープと争うほど下位の方にいました.

しかしその一方でポイントをつかんだお得な選手を獲得している印象がありました.
チームとしての理想はファイターズのような,低~中くらいの年棒で優勝争いに加われるチームであるのかなと.

だからこそ,ファイターズが選手の力量をよく把握できる高田氏をGMに,監督には中間管理職的な立場をよく理解した外国人であるヒルマン氏を就任させたように,イーグルスも故三村氏を編成部長に置き,同じくメジャー式を理解したブラウン監督を配置したのであろうと理解していました.


星野監督はそういうことをするには力が強すぎる監督です.
個人的には星野さんは好きですし,タイガースを再生させた手腕は見事なものがあります.
しかし,ドラゴンズしかりタイガースしかり,星野監督が率いて優勝争いをしたチームというのは大量の金を使い毎年優勝争いを行うチームです.
高い確率で強くはなるでしょうが1.5~2倍程度の総年棒になるでしょう.

(中略)

星野さんが監督に就任するようなことになれば,計画性も一貫性も皆無ということになりますね.

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と書かせて頂きました.

この星野監督評の「星野監督が率いて優勝争いをしたチームというのは大量の金を使い毎年優勝争いを行うチーム」という考え方は第二次中日監督時と阪神監督時の1990年代後半~2000年代前半におけるチーム運営に基づいています.

しかし自分自身が,選手補強の手段とその特性の,時代による変化を考慮に入れていませんでした.

ひとつ前の記事で,2000年前後と現在の主な補強手段について以下のように書いています.
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1990年代後半~2000年代前半
1) ドラフト
2) トレード
3) FA
4) 外国人選手
5) 戦力外選手

2010年現在
1) ドラフト
2) トレード
3) FA
4) 外国人選手
5) 戦力外選手
6) メジャー帰りの日本人選手

ここ10年余りで大きく選手補強の環境が変化しました.
まず,ドラフトの逆指名や自由枠がなくなり,少なくとも10年前に比べれば裏金などに掛かる費用が格段に少なくなったはずです.
次にFAに関しては,FA選手の年棒が不相応に高騰することは少なくなり獲得しやすくなる一方で,補償選手などの制度により選手獲得の際にデメリットが生じる可能性も生まれました.
そして10年前にはほとんどいなかったメジャー帰りの日本人選手が増加しており選択肢の1つになっています.

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2000年前後というのはFA選手の年棒が最も高騰した時代です.
今年獲得した岩村選手の年棒は2年3億ということでしたが,同レベルの選手が2000年ごろにFA選手であればおそらく3~4年10億程度の年棒であっても相場的には不思議ではなかったでしょう.
さらに補償金か補償選手が必要で,FAというのは極めてお金のかかる補強手段でした.
と同時に有力選手を獲得する上では最も有力な手段でもあり,この時期の星野監督はFA戦線に積極的に乗り出し,多くの資金を使うこととなります.


翻って今オフのイーグルスの補強選手をみていると,相対的にコストのかかるFA選手にはあまり興味を示さず,
岩村選手・松井選手といったメジャー帰りの選手の獲得を試みています.
そして岩村選手のような補償選手の流出などのマイナス面を伴わない,NPBで実績のある一流選手を, 1年あたりの年棒1~2億円で獲得しています.

ネームバリューやインパクトと比べるとそれほどの金額は使っていません.

前回の記事で書いた,カープが目指すべきであるはずのまだ制度が追いついていない手段を活用しているように見えます.

上記のような理由から,今シーズンのメジャー帰りの選手には一定にレベルの選手が揃っていることを認識し,星野さんと球団との間でそれらの選手の獲得を補強の中心にすることを既に決めてあり,その上での星野監督就任であればイーグルスは高い戦略性を有していることになります.
もしそうであれば,そして少なくとも現在までの補強をみているとその可能性が考えられるので,「星野さんが監督に就任するようなことになれば,(イーグルスという球団には)計画性も一貫性も皆無ということになりますね」という文は訂正させて頂きます.

ただし,ブラウン監督を支持していた自分としては,ブラウン監督の解雇に関しては批判的です.また,ブラウン監督が能力に欠ける監督だとした場合でも,であればそもそも就任させたこと,そして突然の評価の覆しによる解雇とそれにより監督問題がごたごたしたという印象を残してしまった点については依然非難されるべきだと思っています.


一方でここにきてこれらの補強の資金として考えていたはずである岩隈選手の移籍資金が入ってこない可能性が出てきました.
もしメジャー移籍が破談になれば,移籍資金14億+岩隈選手の年棒3億の,合わせておよそ17億円が新たに必要になります.
これが今後の補強戦略にどのような影響を与えるか.その舵取りに注目しています.