統一球について-番外編- 【使用球変更疑惑にみる陰謀論の構造 3 コストとベネフィット】
3記事目は利益とリスクの関係について.
何らかの陰謀を謀った時に,一番怖いのは暴露のリスクです.
アポロ計画は国際的に大きな注目を浴びており,アメリカ以外の先進諸国 (もちろんソビエト連邦含む) に加え,世界中の天文台やアマチュア無線家もリアルタイムでの無線の傍受や宇宙船の観測を行っていました.
アメリカ政府が捏造を行おうとしたら,これらに関係する人々をすべて買収しなければなりません.
特にアメリカの,冷戦下での最大敵国であるソ連と協調しなければなりません.
アメリカ政府の捏造の動機として「冷戦下での宇宙開発競争に負けないように成果を出す必要があったため」ということを主張される方がいるのですが,この時点でソ連と協調できているわけですから既に矛盾しているわけです.
要するにこの陰謀論を成立させるためには,「冷戦自体が仕組まれていた」という更に大きい陰謀論を出さざるを得なくなってしまうはずなのです.
陰謀論によって利益を得る人物がいるからこそ,陰謀論は提案されます.
しかしながら,この“騙し続ける”というコストと暴露のリスクを考えれば,コストをベネフィットが上回るようなことはまずないでしょう.
統一球の件で言えば,巨人をアメリカ,他の先進国を他球団とみなしてみましょう.
天文台やアマチュア無線家はそれなりにディープなファンに当たります.
使用球を変更すれば少なくとも他球団の選手の一部は確実に気づくはずです.
自軍の選手は何とか口止めさせるとしても,その上で他球団の選手を口止めするためには買収などが必要なはずです.
…だったら,普通に統一球のままで買収した選手に片八百長をやらせた方がコストは少なくて済みますよね.
もちろん中継や球場で野球を沢山見ているディープなファンの中には,「打球の飛び方が前と違う」と気づく人が出てくるはずです.
そういう人たちにも黙ってほしいと買収すればもうコストは天井知らず.
どうしたって割に合いません.
結論は単純ですが,暴露のリスクと陰謀の大きさは相関します. 大きな陰謀である (≒人が多く関わっている) のに暴露していなければ,その陰謀論の信憑性は疑わしいですし, 逆に規模が小さくなれば陰謀は有りうるということになります.
少なくとも自分が目にした限り,アポロや911の陰謀論に関して,この問題についての満足な回答をしてくれた方を目にしたことはありません.