飯尾の駄文日記

広島東洋カープ 時々 東北楽天ゴールデンイーグルス ところにより一時 中国生活

STAP細胞について雑記の追記8 雑記つらつら

早稲田のD論コピペ問題が広まりを見せているようです.

コピペ自体は言語道断なのはもちろんなのですが,それとは別次元で,早稲田大学や主査が果たして主犯なのか*1それとも監督不行き届きなのか,は区別して議論した方が良いと思っています.

この辺りは長くなるので,またその内書いてみたいと思います.

 

それ以外の点についてつらつらと.

 

理研の調査

小保方さんの研究は止まるのか

個人的には時間をかけ過ぎな気がしますが,調査の内約は詳しくはどんな感じなのでしょう .

一年かけるのは結構なのですが,少なくともその間は,小保方さん自身の研究も止まってしまうということでしょうか.

個人的な心象としては小保方さんは真っ黒ですし,研究者としての能力を有しているとは思いません.

ただそれとこれとは別の話.

状況証拠的に犯人っぽい人がいたからと言っても,*2その人の身柄を拘束し続けることは正当化されません.

 

再現実験に臨む研究者は誰か

あと個人的にはこっちの方が大きいのですが,再現実験に勤しむ研究者はどこから連れてくるのでしょうかね.

再生医療は莫大な金が動く分野ですが,その分野に精通した人が数カ月もの時間を再現実験に費やすのでしょうか.

その研究者の本来の研究はどうなるのでしょうか.

 

やはり個人的な意見ですが,研究者の負担と次項の理由で,再現実験一ヶ月+まとめ三ヶ月ていどあれば十分な気がしています.

 

STAP細胞の実在性は“何よりも”大事か

STAP細胞は無条件で素晴らしいわけではない

「論文の細かい間違い*3などはどうでもいいから問題はSTAP細胞が実在するか否かが大事」といった意見を,擁護的な文脈でいまだに目にすることがあります.

もちろん科学的には大事なことですし,今後も基礎生物学の分野で議論されていく話題なのだろうと思います.

ただ,発見直後にその報道のされ方でも気になっていたことですが,“STAP細胞が実在する=iPS細胞よりも確実に優れている”ではありません.

 

 STAP細胞が画期的だったのは,“酸に浸ける”ことで細胞が初期化できるから,というよりは,酸に浸けるという“簡単な手法”で“高い成功率”で細胞が初期化できるからです.

要するに既に臨床応用に対して現実的であるという点が優れていたわけです.

“酸に浸ける”という発想自体は他にもある話でしたし,初期化自体は他の細胞でも既に示されています*4

以前の記事でも書いた通り,このインパクトがなければNatureへの掲載はあったかどうかは不明瞭だと思います*5

 

STAP細胞が“素晴らしいもの”である条件

仮に,STAP細胞が実在したとして,

  1. 最初の報道通りの極めて簡単な手順で
  2. 最初の報道通りの高い成功率
  3. STAP幹細胞を作成でき
  4. その手法が早期に確立し
  5. その過程で少なくとも大きな問題点が見つからない

のでなければ,少なくとも再生医療の観点からの有用性は低いということになります.

無いことの証明は不可能ですが*6,1~3の特徴を持つSTAP細胞の有無は判断できます.

逆に言えば,再現実験で1~3の真偽さえ明らかになれば,それ以上は個々の研究の話になり,なにより最優先されるような話題では無くなります*7

 

今回の流れを乗り物の発展で例えてみると,

  • 自動車や電車しかないとある世界で,飛行機(=iPS細胞)が発明された.
  • 安全性などの問題が議論され,また生産方法なども改良され,短距離での飛行実験(=マウスを使った臨床応用など)もされ始めた.
  • そんな中,従来の3倍の速度で航行できる新飛行機*8(=STAP細胞)の設計図が発表され,順調にいけば従来に飛行機よりもずっと役立つと主張された.
  • その設計図通りに新飛行機を作ってみたけれど,全然飛ばない.

といったような状態です*9

「その設計図通りに作った新飛行機は本当に3倍の速度を出せるかどうか」

さえ明らかにすれば少なくとも社会的な意義は十分であり,

「3倍の速度を出す飛行機は実現し得るか,発明を主張する人物は本当に新飛行機を一度偶然にでも発明したのかどうか」

にリソースを割く意義は無いと思います.

  

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

 

*1:すなわちディプロマミルなのか

*2:証拠隠滅や自決の恐れがあるから自由にはしないなどの理由がなければ

*3:実際は細かい間違いじゃないですけれど

*4:ES細胞MUSE細胞など

*5:この辺りは科学の進歩と直結するので何とも.主旨が全く同じ内容の論文でも,3年前なら載っていた,3年後なら載っていないというのはざらにあります

*6:以前に書いたように悪魔の証明ですから.仮に実験で再現されなくてもやがて類似したものは発見されるかもしれません.ただ,それが明日なのか100年後なのか先に人類が滅びるのかは誰にも分かりません

*7:誤解の無いように言っておくと,もちろん生物学的な意味での意義はありますし,その分野を研究していく人もいるでしょう.将来的に,何かのきっかけでその発見が有用になることもありえます.ただ,短期的な利益は限られており,優先度は低いということです

*8:もちろん塗装は赤で

*9:飛行機は現実世界でも既に広く実用化されているのでピンとこない方もいるかもしれません.その場合は,ワープ航法でもどこでもドアでも好きに置き換えてください