飯尾の駄文日記

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ただただ残念 STAP細胞について雑記

2014年1月28日,驚くべき発表で世間を湧かせたSTAP細胞

その後の進展次第では世間をさらに多いに騒がせるかと思っていましたが,まさかの別の意味で騒がせることになってしまったようです*1

 

しかしまぁ.いくらなんでもというくらいの内容でしたね.

Materials and methodsの無断引用くらいだと,修論レベルまでだと同じようなものはたまに見ることはできますし*2,一応ロジカルには結論には直接関係しないということも言えました*3

 

…だったのですが,昨日明らかにされた問題点,STAP細胞由来テラトーマ免疫染色画像とされていたものがSTAP細胞由来では無かった,というのはもう決定打でしょうね.

当然ないことの証明は悪魔の証明ですから,STAP細胞の発見自体が無かったとは断言できません.

ですが,科学論文というものが基本的に実証によって成り立っている以上*4,件の論文を持ってSTAP細胞の発見を示すことはできません.

百歩譲って,仮にSTAP細胞が実在していて且つ実際に小保方氏が認識していたとしましょう.

それでも,それを実証できていない以上,“発見”ではないのですよね.

つまり,科学におけるpriorityは存在しないということを意味します.

 

例えるならば,この先仮に幽霊やUFOの存在が科学的に証明されたからといって,今まで心霊写真やUFO写真を捏造し証拠として示してきた人物が科学的に正しかったとはならず,あまつさえpriorityを主張できる立場にはならないということです*5

 

 

それにしても,共著者であり今回論文撤回を呼び掛けた若山教授の心境はいかばかりでしょうか.

もちろん,共著者であるという点から責任が全く無いというつもりはありません*6

ただ真摯に研究してきた研究者からすればとても信じられないやりきれない気持ではないかと思います.

 

現実的な面から言っても,論文の問題点を指摘されてからいち早く動いた若山教授は過度な批判を受けるべきではないと思います.

内部告発の問題とリンクするのですが,過度な批判がされるようだと問題を隠蔽する動機が生まれてしまいますからね.

もちろん先に書いたことと関連して,このあたりは程度問題ということになりますが.

 

 

自分自身,およそ1月半前には大きな驚きと興奮を感じただけに,このような結果になり,ただただ残念です.

 

 

ちょっと今回の騒動で論文査読の仕組みについても色々言われていたようです.

少し時間があれば「論文査読過程を漫画家で例えてみる」でも書いてみたいと思います.

 

 

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*1:ただし自分は当初から懐疑的ではありました.これは自分だけではなく少なくない人がそうであったと思っています.とは言え,もちろんここまで杜撰であることを想定していたというよりは,少なくとも自分は「ここまで簡便且つ大きな成果が得られる手法をこれまでの研究者が軒並み見逃すだろうか?」という考えで,「意外と簡便では無い」,「極めて応用し辛い」や「実は何らかのアーティファクトな結果であった」となるのではないかというレベルでしたが….いずれにせよ追試が積み上がってから発展するか廃れるかが決まると思っていました.

*2:もちろん無断引用くらいなら問題ないということでは決してありません

*3:とは言え,「偉い先生の論文はその論文の正確さを保証しないが,杜撰な点や不備が多ければ信頼性も疑われる」というのもまた研究・論文の常ではあります.誤字脱字が多いだけでも査読の印象は著しく悪くなります

*4:論拠によって,仮説を立てる論文や存在を予測する論文などもあります

*5:先に書いたように○○という理由で実在するはずだという仮説を立てる論文などを出している人は別に評価されるかもしれません

*6:投稿の際にcover letterなどに「共著者全員が研究内容に同意している」などと書いているはずですし,今回のようなケースを除けば,共著者も新発見の栄誉をうけとることができます