【違反球隠蔽問題】“生活の知恵”の真意
件の問題は第三者機関の設置がきまったとのことです.
評価するというよりは,これは当然のことという感覚が強いのが正直なところです.
それでも,このような状況下でも開いた口がふさがらないような対応しかしない界隈もあることに比べれば,最低ではないというところかと思います.
第三者機関が,事態の事実関係,NPBとミズノの関係などをきちんと調べて,そして公開してくれることを期待しています.
それに加えて,1つきちんと調べてもらいたいのは下田事務局長の発言した「生活の知恵」という言葉の真意です.
予め断わっておくと,どんな真意であれ,違反球をオープン戦で使用し,それを通知もせずに公式戦で変更したことは非難されるべきです.
一昨日書いたように,ミズノとの関係から言えば違反球の頻出を確認した時点でミズノの責任において再納入しなければならないわけで,そうしなかったのは,
- そもそも,違反球が頻出することを了承した上で反発係数の指示を出していた
- ミズノと強い癒着関係にあり,ミズノが不良品の在庫を抱えるのを防ぐために公表しなかった
のいずれの可能性が高いとは言えるでしょう.
ただ,問題のある対応だったのは承知をした上で,「生活の知恵」というのがNPBの経済状態の困窮を示しているのかどうかを明らかにしておく必要があるということです.
現状NPBは大小様々な問題を抱えており,一部のファンにはそれを指摘されています.
例えば,
- オールスターが3戦もあるせいでその希少価値が薄れていること
- 公式サイトが情報に乏しく,特にMLBのそれと比較すると雲泥の差であること
などです.
一方でこれらの問題は資金的な問題にも関連することです.
オールスターを数多く開催しなければならないのは,NPBが直接資金を獲得する機会に乏しいためでしょうし,公式サイトも外注する資金さえあればすぐにでも改良されるはずでしょう.
もちろん,あんな想像力にも人間性にも乏しいコミッショナーに多大な報酬を払っているという事実もありますし,資金の活用法などに問題がないとは言いません.
ですが,MLBなどに比べると構造的な問題から十分な資金が賄いきれないという事実もおそらくはあると思います.
2004年6月,大阪近鉄バファローズとオリックスブルーウェーブの合併構想が明るみになり,野球界のみならず政界や経済界なども巻き込む問題に発展しました.
いわゆるプロ野球再編問題です.
当時からのプロ野球ファンであれば知らない人はいないでしょうし,プロ野球に関心の乏しい人でもそのような問題がテレビや新聞を賑わせていたことは記憶しているのではないでしょうか.
しかしながらそのおよそ半年前,同年1月に近鉄球団がネーミングライツの売り出しを提案したことを覚えている人はどれだけいるでしょう.
この構想は直後に他球団からの猛反発を受けあえなく頓挫します.
候補に挙げられていたのが消費者金融会社のアコムということもあり,自分の記憶によるものですが,ファンの間でも反対意見が強かったと思います.
その後,ネーミングライツ構想をあきらめた近鉄は合併構想を発案し *1,最終的にプロ野球再編問題へと繋がるわけです.
結果的にみれば,
近鉄の最後のSOSはファンのイメージなどといったあやふやなものにより封殺された,
と言っても過言ではない状況に陥りました.
今から振り返れば,当時の再編問題により,楽天の誕生に繋がり,パリーグの盛り上がりや交流戦の導入など,プラスになった出来事が多かったとも言えるでしょう*2.
その一方で,近鉄の断末魔にも似たSOSを聞き逃したばかりに1リーグ構想に突き進んでいた可能性も少なからずあったとも言えます.
もし巨人の渡辺オーナー (当時) が不用意な一言を口にしていなければそうなった可能性は極めて高いと思います.
先程書いたように,対応やそもそもの事実関係の問題は当然大きいというのを理解した上で, 「生活の知恵」という言葉が,
- NPBの資金繰りは潤沢にもかかわらず,癒着や面子といった要因により出てきたものなのか
- 原因はともあれ,NPBの資金的な意味での責任において,対応できる程度の能力はないことから出たある意味実体を示した発言によるものなのか
このあたりはきっちりと把握している必要があると言えると思います.
もし後者の場合,対応などの問題は当然追及した上で,構造的な問題の解消にも取り組んでいくべきでしょう.
そうしなければ,かつてのように,急に問題が顕在化するかもしれません.
※16日一部修正
*1:あるいは提案され
*2:このあたりは過去記事でも書いています:戦国パ・リーグを生み出したもの - 飯尾の駄文日記